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小児循環器治療。利尿薬の使い方
この文献では、小児の心疾患における利尿薬の役割、使用の実際、循環動態の破綻と体液の観点から述べられている。以下は文章を引用し、簡単にまとめたものである。
○利尿薬の種類
ループ利尿薬のフロセミドは、急性心不全に多く使用されている。強力な利尿作用によって左心不全においては、急性肺水腫を改善。右心不全でも過剰な体液貯蔵を改善させる。
しかし小児で特に問題となっている聴覚障害については、1回静注の方が発症しやすいという報告があるため留意が必要。長期投与によるビタミンB1欠乏や高尿酸血症も忘れないように。
サイアザイド系利尿薬は、遠位尿細管でのNa再吸収の増加によるもので、サイアザイドを併用することにより利尿効果が著しく改善。低ナトリウム血症は心不全の予後との関連が多いと研究で指摘されているそうなので、慎重に併用する必要があるとのこと。
アルドステロン拮抗薬は、RAA系の賦活化を抑制するため、心筋保護効果や予後改善効果、蛋白漏出性胃腸症への効果が報告されているので積極的に併用するよう推奨されているようだ。
心房性Na利尿ホルモンは、日本では血管拡張と利尿作用をもつ薬剤として、成人領域にてしばしば使用されているとのこと。小児でもその効果は多く報告がされている。心・腎保護効果もある。しかし血管拡張作用があるため、血圧の低い患者では少量から慎重な投与が必要。
水利尿薬のトルバプタン(バソプレシンV2受容体阻害薬)は、唯一の水利尿薬。余剰水分の体外への放出を促すことで、低ナトリウム血症を是正する。小児においてもその効果を報告する研究は散見されている。
静脈圧を低下させ体液過剰状態を解くことは、心不全患者の予後の改善をもたらすが、利尿薬の必要性はそれぞれの患者に十分に検討されるべきであり、その疾患ごとにひとまとめにして使用するべきではない。患者ごとの特徴を把握したうえで、適切な選択が必要である。と、著者の稲井さんは述べられている。
引用文献
衞藤義勝ら:小児科診療 第79巻 第7号,(株)診断と治療社,東京,2016,P883〜
文責:kuru