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●ニューロリハビリテーションとは
「ニューロサイエンスとその関連の研究によって明らかになった脳の理論等の知見を、リハビリテーション医療に応用した概念、評価法、治療法など」(2009年道免和久)
重要なことは、単なる神経疾患のリハビリ(Neurologic rehabilitation)ではなく、Neurologyはもちろん、Neuroscience的知見の臨床応用をめざす点です。
したがって、Neuro-rehabilitationの研究を推進するためには、リハビリ医学、理学療法学、作業療法学、言語療法学、神経内科学だけでなく
解剖学、神経生理学、バイオメカニクス、心理学、計算論的神経科学、ロボット工学などの学際的な知恵を結集する必要があります。
ニューロリハビリテーションは、脳卒中でダメージを受けた神経機能を再建する技術。
運動障害の患者は「ヘッドセットで脳活動を測定→その状態に応じて電動デバイスが駆動→運動を補助→生じた運動感覚が脳に戻る。」という方法を行う。
また、神経成長促進役の投与や、神経幹細胞の移植による神経回路を修復する治療も併用される。
◎ ニューロリハビリの模式図、ニューロリハビリで使われるヘッドセット
◎ 脳障害による麻痺側上肢のニューロリハビリテーションの考え方
◎ ロボット技術を応用したニューロリハビリテーション
『運動機能回復を目的とした脳卒中リハビリテーションの
脳科学を根拠とする理論とその実際』
▼脳障害後,比較的遅れて起こる機能回復は,中枢神経の可塑的変化や神経ネットワークの再
構築によって起きる。
これを効率良く科学的知見に基づいて行うのがニューロリハビリテー
ションである。
【脳損傷後の機能回復機序】
脳卒中後,比較的早い時期に劇的に運動機能の回復するものの多くは,脳浮腫による錐体路の圧迫の改善や直接その場所に脳損傷がなくても,神経線維に結ばれている影響された部位の血流や代謝の改善(Diaschisis の回復)によると考えられる。
一方,神経系の可塑的変化は脳内に新しい神経ネットワークを作り,残された正常な組織が働くことでの機能回復であり,その回復は長期にわたる。そしてその機能回復を科学的方法にて促進させようとするのがニューロリハビリテーションである。
ニューロリハビリテーションの観点からは,脳は常にダイナミックに変化しており,回復のプラトーは存在せず,逆に形成された神経ネットワークも使用しなくなると退行し機能低下する。
…運動機能回復のための理論と試みている訓練方法の実際…
(以下現在試みている新しい機能回復訓練方法と治療について紹介をいくつか抜粋。)
実際の訓練プログラムとゴール設定は,患者さんの価値観や病態などのオーダーメイドで設定する。
訓練は必ずしも,臨床的エビデンスで認められているものだけでなく,動物実験などを含めた理論とそれを応用した訓練方法を試みているが,実際にはいくつかの組み合わせで,すべての患者さんに同じように訓練を行うわけではない。
また機能回復を主なゴールと設定しない超高齢者や他疾患の併存症の多い患者では,早い日常生活動作の獲得を目的とした旧来の代償的動作の運動学習を中心とした訓練も実際には行っている。
〘麻痺肢の積極的使用と感覚入力〙
重症麻痺で麻痺肢の機能的訓練が困難な段階では,伸筋の興奮性を高めて痙縮予防効果や運動錯覚により運動に関連する運動関連領域の脳に賦活化を起こす振動刺激やミラーテラピー(※)で,動かしている運動錯覚を起こさせる。
※ミラーセラピーとは上下肢の非麻痺側と麻痺側の間に鏡を起き,非麻痺側が鏡に写って動いている像を覗いて,麻痺側肢も非麻痺側肢と同じように動かそうと努力する訓練である。
麻痺側肢は実際には動いてなくても,動かしているような奇妙な感覚を感じる。また日常動作獲得訓練でも,麻痺側を添えることで非麻痺側だけでの動作にならないようにし,非麻痺肢の
みでなく麻痺肢の感覚入力を行う。
訓練には,スポーツなどの心得がある場合は,過去の手続き記憶を改善の契機にする観点からも両手使用によるバッティングやレシーブなどの運動動作を積極的に取り入れる。
また筋電図を拾えない段階では,強制的な電気的治療刺激による麻痺肢への感覚刺激ならびに
筋肉の短縮予防や関節の拘縮予防を徹底させる。
パワーアシストタイプの電気的治療では,随意的運動促通と刺激による体性感覚入力の増加の両方が期待でき,機能回復への脳の可塑的変化に有効だと思われる。
随意的運動は,随意的収縮の段階に応じて,目的のない単純な動きの繰り返しではなく,日常生活などで意味のある随意的な積極的な運動訓練を継続する。
いつも同じ単純な繰り返しの反復運動や単関節の単純な動きは,脳の可塑的変化を伴った神経ネットワークの再構築を起こしにくいことより,いくつかの動作の組み合わせや状況判断を必要とする動作や判断に伴って
手足を動かす必要があるゲームなどで多様な運動が望ましい。難易度は,セラピストや器具を用いてやや難しいレベルで行う。
〘両側性運動による両側大脳半球の賦活化ならびに脳梁を介した運動促進〙
我々の日常生活は常に両手足の協働で行われている。
紐を結ぶ,片方で保持し,もう片方での作業,自転車や歩行など両側での運動が円滑に行われなければならず,運動は片手運動の訓練だけでは不十分で両側の強調運動をトレーニングする必要がある。
また両側性の訓練の機能転帰への有効性も報告されており,両手を使用した単純な動きの訓練と随意的な訓練の両方を行っている。
両手使用によるハンドサイクリンなどは,能動的・受動的な運動の繰り返しで,このような運動後では障害肢の随意的運動も起こしやすいことが報告されている。
実際,上肢ではペダリングの操作後,下肢では歩行訓練や起立・着席訓練の直後では,促通効果で随意収縮が促通されることを経験する。
〘イメージ療法〙
運動を想像するだけで,その運動に必要な部位の血流が上昇することが知られ,イメージトレーニングはスポーツや芸術の分野ですでに応用されているが,手がかりなしのイメージの想起はすでに正しい運動学習が完了した後でないと,誤学習の原因となりかねない。
脳卒中での障害後のイメージ療法では,患者が正しい運動学習イメージの想起が非常に困難であることが多く,鏡やヘッドマウントディスプレイを利用して,第一人称の立場での錯覚を伴う物のイメージ療法が実用的である。
前述のミラーテラピーは,イメージ療法の一種でもあり,鏡を使用しない状態では随意的運動ができなくても,鏡をおいた状態では可能となるケースを経験する。
随意的運動が可能になった時点では,あくまでも筋活動を実際に伴った随意的運動の訓練を中心にした上で,補助訓練として有用だと考える。
〘機能回復訓練における心理ならびに精神的ケアの重要性〙
脳損傷後の機能回復訓練は,患者にとって精神的ストレスが大きいことから,心理ならびに精神的ケアは重要である。
スタッフのちょっとした一言がモチベーションに影響を与えてしまうことが多く,患者への訓練の効果に対する説明などにも強化学習の理論などを考慮した発言が求められる。
大脳基底核が関与する強化学習に関連して,報酬予測誤差が重要である.大きな期待をしすぎて,その報酬である回復の程度が小さかったり,遅かったりするとモチベーションと運動学習の阻害因子になる。
逆に期待より,改善が大きかった場合は,患者さんにとって大きな報酬となり,運動学習を促進させることが可能である。一方で希望を完全になくしてしまうと,モチベーションが起きない。
モチベーションの与え方も,単に手や足が動くように頑張りましょうではなく,良くなった結果,楽しみや生きがいにつながる xxxxが可能になるという具体的な目標の方が良い。
また低すぎず達成感も味わえ,可能だと思えるレベルの短期目標の設定も重要である。第三者からはかなり改善したとみえる場合でも患者の満足度は決して高くなく,障害受容の獲得は実際には不可能の場合が多い。
現実から目をそむけたリハビリテーションだけの人生にさせない配慮をしつつ,本人の価値観を充分尊重し,障害受容の押付けや希望の全否定をすべきでない。
そして回復の可能性があり,本人もそれを希望する場合には,あとで充分な訓練を受けていなかったことを生涯後悔しないよう,現在考えられる最良の機能回復訓練を提供してあげることの大切さを痛感する。
ニューロリハビリテーションのコンピューターや機械を脳や身体に装着しての新しい訓練方法の展開もすでに始まっている。今後も,回復治療に関して更なる発展が期待される。
しかし,リハビリテーションは,機能回復だけを至上主義としたものでは決してあってはならない。患者さんの価値観や心情を尊重した上で,患者さんの人生の質を最大限に高めることが最も重要で,機能回復はその中のひとつでしかない。
医療者の価値観を一方的に押し付けてはならないことを自戒の意味を込めて最後に強調しておきたい。
文献
相澤病院医学雑誌 第8巻1-11(2010)(ネット上のpdfより)
CRASEED Rehablog ニューロリハビリテーションとリハビリ医療の真髄に迫るDr. Domenのブログ
医療関係者向け兵庫医科大学リハビリ医学教室最新情報ブログ
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