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kuru03-01501151057/風の概念 ......

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風の概念とその治療。
『中医臨床【特集】百病の長「風」とその治療 P18〜』より



◆風とは
中医理論のなかで最も基本となる概念である。風は自然現象であり、六気の1つである。六気とは即ち『風・寒・暑・湿・燥・火』の六種の正常な自然界の気候を指す。
風はそれぞれに発生するが主に春に発生する。春というのはすべてのものが再生し、生まれ育まれる。風は疏(通)・散という性質があり、人体のなかでは肝気がこれに相応する。
肝は疏泄をつかさどり、風の流動・温和という性質に順応していきいきとした盛んな生気の象徴であるため、春は風の肝気に通ずる。
(疏泄とは;肝の生理機能のひとつ。自律神経の働きに似ている。精神機能や臓腑の活動をのびやかに円滑に保ち、新陳代謝と同様な意味がある。)

◆風邪とは
『風邪』とは六淫(『風・寒・暑・湿・燥・火』の六気が正常を失った状態)の1つであり、内風・外風に分けられる。外は気分・内は血分(ちわけ)をわずらわせる。

【内風】陰陽の失調・臓腑の異常・気化の異常・気機の逆乱・痰濁や瘀血の凝結・化熱(けねつ)・化火(かか)などにより起こる。
【外風】常に『寒・熱・暑・湿・燥邪』とともに疾患を招く。


《内風について》

内風とは病機と病証を合わせた概念。
内風には2つあり、
・体内の臓腑・陰陽・気血の失調であり、陽気亢逆の病理状態、その病理状態がまねいた病症のことをいう。
・病証の名称。外感以外の原因で発生した中風のことをさす。

1)内風の病機とは陽気の異常である
『素問』陰陽応象大論には「身体の陽気は、天地の疾風に相当する」と記されている。この一節は、後世の内風に対する認識の重要な根拠となり、この一節にもとづき『張氏医通』では「風の証は体内から発生する」と指摘している。また葉桂も『臨証指南医案』中風で「内風とは、身体の陽気の変動である」と指摘し「陽が内風と化す」ことや、その原因が肝であること、さらに「肝は風木の臓である。精血を消耗したことにより水が木を養えなくなり、肝の滋栄が少なくなり肝陽が亢進し内風が起こる(すなわち「肝陽化風」)」という病機理論を強調している。

2)内風の治則
内風の発病は、臓腑の損傷・陰陽の失調が元となる。陰陽の失調は陽亢陰虚が多くみられ、肝との関係がとても深い。
動風の原因は、陽気亢盛となり内風が過度に動いた・陽気が虚して筋が温煦(おんく)されなくなり陽虚生風となった・筋脈失養・陰血が虚して潤いが無くなった・陰が陽を制御できなくなり風と化したなどである。

内風は虚・実に分けられる。
「実」に属するもの → 陽盛・火旺・熱極・痰火・痰熱
「虚」に属するもの → 陰虚・血虚・気虚・陽虚・臓腑の虚損

3)内風証治療の治療例
<実証>
◯痰気化風
中風・眩暈・癇証・身体の震えなどにみられる。眩暈・ひきつけ・震え・意識を失って倒れるなどの症状があらわれ、舌質暗淡・脈沈滑などを伴う。
処方法 → 滌痰湯を煎じ、その薬液で蘇合香丸を服用する。
◯痰熱(痰火)生風
中風・眩暈・癇証などにみられ、眩暈・ひきつけ・人事不省・舌質紅・脈滑数などの症状を伴う。
処方法 → 中風は羚羊角湯を煎じ、その薬液で安宮牛黄丸を服用する。癇証は定癇丸加減を用いる。

<虚証>
◯脾虚肝旺
小児の慢驚風によくみられる。精神的な疲労・肢体や筋脈のひきつけなどの症状があらわれ、舌質淡・舌苔薄白・脈細弦を伴う。「柳選四家医案」評選静香楼医案では「四肢は脾胃の気を受けるため、脾胃が虚衰し受ける気がなくなると、(四肢に)震えがあらわれる。土(脾)が虚すと木(肝)は必ず揺れる」とある。
→四君子湯に天麻・蟬退・鈎藤・当帰・石斛・散棗仁などを加える。


《外風について》

外風の意味は3つある、
・外来の風すなわち風邪
・外風によって起こる病証
・外邪が人体に侵入したことで発生した中風 → またの名を「外中風」ともいう

外風はどこにでも到達することが出来、外風に犯されると気血が損傷し、経脈がスムーズに流れなくなり「痺証(ひしょう)・中風・眩暈・頭痛」などの病証をまねく。

  1. 風邪が絡にあたると、口眼歪斜などが現れ、風邪が血分に入ると肌膚(きふ)の感覚障害をまねき、血痺(けっぴ)が発生してしまう。
  2. 風邪が血分を傷つけた、または風毒が損傷部から内部に侵入すると筋脈が養われなくなり「破傷風」になる。
  3. 風邪に侵されそれが肌膚に溢れると、皮膚に疾患・痒みなどといった病証をまねく。
  4. 風毒が血に侵入すると経脈が凝滞し、気血の流れを悪くし関節が赤く腫れ、熱を持って痛む痺証をまねく。
  5. 風にわずらわされ血燥となると、毛髪が抜け落ちる「遊風」となる。

1)外風治療は疏・散を行う
風は外部から到来するため、治療の際は疏・散を行うと効果的。
外風治療には、辛散疏透・疏通経脈の作用を持つ独活(うど)・荊芥(けいがい)・防風などが常用されている。これらの薬材を「風薬」と呼ぶ。

2)「風の治療はまず血を治める」というのが風病治療の重要な治則である
ここでいう風とは外風と風病である。外風の治療の際は、血を調整する必要があり、袪風散邪 (きょふうさんじゃ)を行って治療するのがよく、袪風の際には必ず調血を兼ねなければならない。調血には、行血・活血・涼血・養血がある。血は流れば風は消散しやすくなり、血が活発に動けば風が隠れる場所がなくなる。


3)外風証治療の治療例
◯眩暈
外感病の過程、または外感の症状が消失した後に現れる眩暈は、風邪、特に風熱が上部に上って清竅(せいきょう)(身体の上部にある穴。耳・目・鼻・口)をわずらわせることがおもな原因。臨床では前庭神経炎がよくみられる。めまい・悪心・嘔吐・舌質紅・舌苔薄黄・脈弦細などが症状としてあらわれる。
処方法 → 小柴胡湯(しょうさいことう)から人参・半夏を除き、ハッカ・蟬退・僵蚕・鈎藤を加える。
◯風団
麻疹のことであり、発疹が突然現れたり消えたりして、耐えがたいほど痒く、ときには痒みが現れたり消えたりする。また便が硬く、便秘する・舌質淡紅・舌苔薄白・脈浮細弦を伴う。
処方法 → 桂枝湯(けいしとう)をおもに用いる。風寒の場合は、荊芥・防風・当帰などを蟬退などを加え、風熱は菊花・蟬退・僵蚕などを加える。便秘があらわれている場合は、大黄色・当帰・何首鳥・などを加える。


◆風症・風病
1.風症とは
身体が揺れ動く・症状が迅速に変化する疾患のことをさす。おもに身体が震えて落ち着かない、筋肉・筋脈が痙攣を起こす、小刻みな震えが止まない、または発病が急速・不規則に変化するという特徴がある。風邪が風症を引き起こす主な病因の1つとなっている。

2.風病とは
風邪を受けた、臓腑機能が失調したときに発症し、おもに風症があらわれる病証である。よくみられるものとしては昏迷・半身不随・震え・痙攣・ひきつけ・筋肉痙攣・眩暈など。風邪は常に変動をするため風病が数多くみられ複雑に変化をみせる。

◯臓腑の風病とは
風邪が五臓六腑を侵し、その臓腑機能の失調をまねく病証。
  1. 心風;風邪が心に入り起こる。多汗悪風・唇や舌が乾燥する・怒りっぽい・言葉がうまく話せない。
  2. 肺風;風邪が肺に入り起こる。多汗悪風・顔色が白い・咳が出て息切れがするなどの症状があらわれる。日中は症状が緩和され、夜間にひどくなるという特徴がある。
  3. 肝風;風邪が肝に入り起こる。多汗悪風・のどの乾燥・怒りっぽい・すぐ悲しくなる・異性を嫌う・目の下が青くなるなどの症状があらわれる。
  4. 脾風;風寒が侵入しそれが去らずに肺・肝を通って脾に伝わる、または夏季の風邪により脾が傷つけられて起こる。多汗悪風・食欲不振・四肢がだるいなどの症状があらわれる
  5. 腎風;胃が風邪に傷つけられて起こる。頸部の発汗が多い。風を嫌がる・食べ物を受け付けない・胸がふさがって通じないような感覚がある・腹部膨満感があらわれやすい・寒さを受けると上腹部が張る・冷たいものを飲んだり食べたりするとすぐに下痢をする・身体は痩せているのに腹部が大きいなどの症状があらわれる。
  6. 腸風;風邪が腸に入って起こり、そん泄(未消化物が混じった下痢)が主な症状。



文責;kuru