Back to Howawan's Homepage to index to Yahoo's Homepage

kuru04-01411261415/日本医学・中医学 ......

inhalts

kuru04-01411261415@
日本漢方と中医学の思考法
文献;中医臨床Vol.35-No.3 2014/9より


中医学とは
単純に現代中国における伝統医学と位置づけることは適当ではない。
中医学は古代中国の黄河流域および長江流域を起源とする伝統医学ではあるがその後東南アジア、ヨーロッパ、アメリカへと伝わっていく過程でそれぞれの国の地域独自の文化性が加味され、形態と構造にもそれぞれの変化がもたらされたからである。基本的な思考や内容は同じであると考えられる。

中医学は日本漢方の存在を無視することは出来ない、同様に他の国の医学も中国伝統医学との関係を断ち切ることもできない。中医学を理解するには、それぞれの文化面や科学的側面だけを殊更クローズアップすることがあってはならない。ただ言えることは、日本漢方とは日本的な特徴をもった中医学だということである。

それでは、日本漢方とは
日本漢方の特徴は、腹診?方証相対?これはどうも決めつけ難いと著者の黄煌氏は語っている。
ただ日本漢方は、傷寒論を中心とした「方証相対」という方法をとることが多いのだそう。

何が中医学であり、何が日本漢方なのかを定義するのは困難なことといえる。


■分派することが中医学の特徴
中医学の内容は複雑多岐であり、時代や地域、場合によっては医師一人ひとりの提唱する医学理論や治療スタイルが異なり、分派こそが特徴の1つであるといえる。これは中国だけでなく、日本も同様である。
中国では「歴代」「経方派」「時方派」等があり、「傷寒派」と「温病派」の論争があり、あるものは「寒冷証」を得意とし、あるものは「温熱証」を得意とするなど、さまざまである。それと同様日本でも「古方派」「後世方派」「折衷派」等があり、「傷寒論」を推奨するものもいれば「内経」「難経」を推奨するものもいる。

■日本漢方も理論を重視し、中国経方も証を重んじる
日本漢方の疾病認識は構造主義的であってその基本は証である。中医学は還元主義的であり、基本的には五行学説であるという方がいるそう。しかしこのような言い方は必ずしも正確というわけではない。日本漢方にも理論を重視する一面があり、例として『素問』『霊枢』の研究では中国にひけをとるものではない。
一方の中国中医学のなかにも歴史上の一大流である経方派がそうであるように、方証相対を旗印として掲げるものはいる。経方派は宋代に興り、清代初期に再び勢いを増し、近代にも盛んとなり、現在の中国でも再び隆盛を誇っている。経方家には張仲景の『傷寒雑病論』を推載し、方証相対を支持して「この証にはこの方」という方法をとるように主張している。

■中医学には2つのカテゴリーの理論がある

  1. 解釈のための理論 →陰陽五行説を基本とする「内経」系の理論
  2. 治療のための理論 →方証薬証を元とした「傷寒論」系の理論
これら2種類の理論は相容れず「内経」系の理論に基づき、「傷寒論」系の理論を用いることは有り得ない。このように医学に異なった2種類の理論が形成されたのは、医師が古代社会においてやむなく選択した生存のための道であったようだ。

中医学のなかでも最も活力ある分野として薬物療法と鍼灸がある。この後者の国際標準化の進捗状況は順調だが、前者の歩みはいささか停滞しているよう。
原因の1つとしては、薬物療法の研究では往々にして薬物の研究が重視され、処方の研究が蔑ろにされているためである。方というのは中医学の中核であり、「傷寒雑病論」に記載されている古代の経験方(中国では経方、日本では古方という)はとりわけ処方中の精華である。天然薬物は単味から複方まで、無数の人体による試験を経ており、実用性が非常に高く、そこには古代人類の疾病治療の智恵が蓄積されているため、大切に取り扱いおおいに研究すべきである。

しかし今はまだ中医学を標準化する時機ではないようだ。標準化するための基礎研究がいかんせん不足しているし、中医学を標準化するための国際準則も確定されていないからである。
規範化された中医学またはグローバルな中医学を形成しようとするならば、まずは分化しなければならないそうだ。これに関して中医学だけではない。日本漢方も同様であり、中医学の中の経方、鍼灸、推拿正骨などの学科もそれぞれ独自の法則にしたがって発展する必要がある。
1つの理論体系に封じ込めたり、西洋医学の評価や指導をあおぐ必要はなく、中日両国はどの医学が正統であり、どの体系が正統かなどという論争に終始してはならず、国際的学術交流と協力をしてこそ現実的な前進ができると著者は語っている。





文責kuru