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日本漢方と中医学の思考法
文献;中医臨床Vol.35-No.3 2014/9より
中医学とは
単純に現代中国における伝統医学と位置づけることは適当ではない。
中医学は古代中国の黄河流域および長江流域を起源とする伝統医学ではあるがその後東南アジア、ヨーロッパ、アメリカへと伝わっていく過程でそれぞれの国の地域独自の文化性が加味され、形態と構造にもそれぞれの変化がもたらされたからである。基本的な思考や内容は同じであると考えられる。
中医学は日本漢方の存在を無視することは出来ない、同様に他の国の医学も中国伝統医学との関係を断ち切ることもできない。中医学を理解するには、それぞれの文化面や科学的側面だけを殊更クローズアップすることがあってはならない。ただ言えることは、日本漢方とは日本的な特徴をもった中医学だということである。
それでは、日本漢方とは
日本漢方の特徴は、腹診?方証相対?これはどうも決めつけ難いと著者の黄煌氏は語っている。
ただ日本漢方は、傷寒論を中心とした「方証相対」という方法をとることが多いのだそう。
何が中医学であり、何が日本漢方なのかを定義するのは困難なことといえる。
■分派することが中医学の特徴
中医学の内容は複雑多岐であり、時代や地域、場合によっては医師一人ひとりの提唱する医学理論や治療スタイルが異なり、分派こそが特徴の1つであるといえる。これは中国だけでなく、日本も同様である。
中国では「歴代」「経方派」「時方派」等があり、「傷寒派」と「温病派」の論争があり、あるものは「寒冷証」を得意とし、あるものは「温熱証」を得意とするなど、さまざまである。それと同様日本でも「古方派」「後世方派」「折衷派」等があり、「傷寒論」を推奨するものもいれば「内経」「難経」を推奨するものもいる。
■日本漢方も理論を重視し、中国経方も証を重んじる
日本漢方の疾病認識は構造主義的であってその基本は証である。中医学は還元主義的であり、基本的には五行学説であるという方がいるそう。しかしこのような言い方は必ずしも正確というわけではない。日本漢方にも理論を重視する一面があり、例として『素問』『霊枢』の研究では中国にひけをとるものではない。
一方の中国中医学のなかにも歴史上の一大流である経方派がそうであるように、方証相対を旗印として掲げるものはいる。経方派は宋代に興り、清代初期に再び勢いを増し、近代にも盛んとなり、現在の中国でも再び隆盛を誇っている。経方家には張仲景の『傷寒雑病論』を推載し、方証相対を支持して「この証にはこの方」という方法をとるように主張している。
■中医学には2つのカテゴリーの理論がある