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以下文献先のP737,738「先天性代謝異常症とNGS解析ー当研究室での症例をもとに」より、そのまま引用
先天性代謝異常症とNGS解析(症例をもとにされたもの)
一般に葉酸は消化管から吸収され、肝臓で代謝され5-methyltetrahydrofolate(MTHF)になり、末梢組織に運ばれる。
脳のMTHF濃度上昇を調整しているのは、プロトン共役葉酸輸送体(proton-coupled folate transporter PCFT;SLC46A1)[MIM*611672]、葉酸運搬体(reduced folate carrier RFC;SLC19A1)[MIM*600424]2つのGPIアンカー型受容体である、葉酸受容体αおよびβ(folate receptor alpha;FRα[MIM*136430]、folate receptor beta;FRβ[MIM*136425]。
FRα:脈絡叢・肺・甲状腺・腎尿細管の血管内皮細胞に多く局在
FRβ:赤血球などの中胚葉由来の細胞に多く局在
健常な両親から生まれた2人の罹患兄妹例。
乳児期は正常な成長、発達をしていたが徐々に退行し、てんかんおよび知的障害を認めた。
17歳の兄は、頸定4ヶ月、寝返り5ヶ月と乳幼児期の運動発達には問題を認めなかったが、歩行が不安定、走ることが困難。1歳4ヶ月で1語の発語。現在17歳になるが、3語文までしか話すことはできない。
14歳の妹は、乳児期の運動発達障害は認められなかったが、2歳に失調性歩行に。1歳で1語、3歳7ヶ月で体幹性失調、不明瞭発語、中等度の企図振戦が見られた。他の症状については省略する。
罹患児および、両親の検体を全エクソームシークエンスし、トリオ解析を施行。表より、 FOLR1遺伝子異常を認めた兄妹例の候補バリアント絞り込み手法
遺伝子機能を考慮し、最終的に候補遺伝子をFOLR1遺伝子変異[c.374G>T(p.R125L),c.466T>G(p.W156G)]とした。FOLR1遺伝子は、FRαをコードし、機能喪失型変異により大脳の葉酸輸送の大部分を損なう。
この異常で、乳児期後期より退行がみられ、運動失調、てんかん、大脳白質萎縮を生じる。
この症例は、全エクソーム解析の結果より、脳脊髄液の葉酸低値が確認され先天性葉酸代謝異常症と診断された。ということが述べられている。
文献)
衞藤義勝ら:小児科診療 第79巻 第6号,(株)診断と治療社,東京,2016
文責)kuru