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ヘモクロマトーシス(HH)
(以下のまとめは、文献1よりほぼそのまま引用。さらにその内容に文献2を引用し付け足しています)
臓器の実質細胞に鉄が過剰に蓄積したことにより、機能障害を生じた病態。
本来生体に必要不可欠な鉄は、過剰に存在することによって、重篤な臓器障害(心不全、不整脈、肝不全、内分泌・発育障害、発ガンなど)を呈するため厳密に制御されているが、なんらかの原因により調節が崩れると細胞障害や組織障害、臓器機能不全をもたらしてしまう。
主な原因としては、6番染色体上に存在するHFE遺伝子の変異であり。HFE遺伝子変異に伴い、腸管から鉄吸収は正常の3~4倍に亢進される。
鉄蓄積の原因が常染色体劣性遺伝の鉄吸収過剰症の場合 ー>遺伝性ヘモクロマトーシス
輸血など鉄過剰負荷の場合 ー>続発性ヘモクロマトーシス
難病情報センターでは以下のようにまとめられていた。
特発性:生体内 の鉄代謝に関与する各種の遺伝子(HFE、ヘモジュベリン、ヘプシジン、トランスフェリン受容体2、フェロポルチン1)の異常に基づく遺伝性ヘモクロマトーシスを主に指す。
二次性:もともと鉄代謝に関しては異常がないが、例えば頻回で大量の赤血球輸血に起因する輸血後鉄過剰症や、大量の飲酒などによる鉄の過剰摂取などが原因となって引き起こされるものを指す。
過剰な鉄は主に、肝、膵、皮膚などに沈着し、さまざまな症状が現れる。
図:ヘモクロマトーシスの病態
HH患者は稀な疾患ではなく、無症状の人を含めると、欧米人では300人に1人と推定される。
難病情報センターによると、欧米では、遺伝性ヘモクロマトーシスが非常に多く、正確な患者数は明らかとなっていないが、本邦では輸血後鉄過剰症がほとんど。とある。日本人では、欧米人に比べ圧倒的に少ない。
主に、40~50才の男性や閉経後の女性に発生しやすい。
初期症状として、原因不明の倦怠感、関節痛、肝機能障害が見られることがある。進行すると、肝硬変、糖尿病、皮膚色素沈着(ヘモクロマトーシスの三徴)を呈する。
合併症として、甲状腺・副甲状腺・下垂体、性機能の低下症が現れることがある。難病情報センターによると、さらに中指骨及び手関節、膝蓋、肩及び腰部に有痛性の関節症も高頻度に現われ、肝細胞癌を合併することもある。と書かれている。
○検査所見
鉄過剰状態を反映し、血清鉄とフェリチンおよびトランスフェリン飽和率(TS=血清鉄/TIBC×100%:正常<45%)が増加する。肝生検を行うと、病理診断(肝細胞内鉄沈着と肝硬変の有無)および肝鉄含量増加がわかる。肝の画像検査で、CT値上昇(白くなる)、MRI画像(T2強調画像)の低信号化(黒くなる)がみられる。
肝硬変になる前に、治療をすることにより予後が良い。早期診断が大切。
早期診断には、トランスフェリン飽和率TSが有用。TSが55%以上、フェリチン値の増加があれば、肝生検にて診断を確定する。遺伝子診断はHFE遺伝子のC282Y変異のホモ接合体以外の変異もあることに注意。
○治療法
臓器に付着した鉄を除去する治療、鉄沈着によって生じた臓器障害に対する対症療法がある。
瀉血療法が最も効果的で安価。貧血などの理由で瀉血が不可な場合は、鉄排泄促進薬のデスフェラール(鉄キレート剤)を投与。瀉血療法で貧血状態になるが、これによって造血亢進し、臓器に付着していた鉄が血液中に動員されるため、臓器中の鉄の減少が期待できる。一方で、鉄キレート剤投与による鉄そのものによる積極的な排泄療法は、鉄を捕捉する薬剤デスフェリオキサミンが使用。皮下注射ないしは静脈注射で投与し、鉄の尿中への排泄促進を図るものだが、薬剤の半減期が短いため、十分な効果を得るためには連日の持続投与が必要、と難病情報センターの研究班は述べている。
禁忌事項:アルコール摂取は鉄吸収を促進させるため、禁酒または節酒が必要となる。ビタミンC投与は鉄吸収を促進させるため、禁忌とされる。食事療法が大切。市販の健康食品などにはビタミンCや鉄分を含むものがあるため、患者指導が必要。
文献: