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○目的
今回口演の目的は、抄録にも書きましたように、「医師にとって使い易い」電子カルテの作成には、何が必要かを知ることです。
○診療中の入力について
まずは私どものHowawan WebKarte System(以下WebKarteとします)の エントリー画面です。メニューは上からHyperkarte,WebKarte,紹介状、データ一覧、データベースプログラムの順にならんでいます。WebKarteの項目をクリックして、 カルテ作成画面に進み、症状を選択、クリック、タイプ(記入)していきます。これらは、お母さんに、「どんな症状がありますか?」から始まり、「それは何時からですか」と聞き、と言う風に主に、こちらから主導で聞き取ることになります。自由に話を聞きながらでも出来ますが、時間的な問題を無視してクリックしていくと、後で、症状の前後、つまり熱が先か、咳が先かを誤ることにつながるからです。ただし、言い出しっぺがこちらで、ということで、誘導してはいけませんから、電子カルテの作成での問診テクニックになると思います。これが、手書きですと、適当に、挿入できるようにあらかじめ、紙面というか、入力フォームを調節できますので。
○デスクトップの対面性とタイピング
次に、 デスクトップの対面性です。現在、市販の電子カルテで主流は、モニター画面の吃立したものですが、診察室に入ってきた患者さんとの面談では、face to faceが原則と思われ、医師が横を向いたままキーボードを叩くのは感心できませんし、なんとなく失礼でしょう。そこで、当院では、御覧のように、140度にスラントした14インチ画面に書き込んでいます。これなら、モニタ画面に対面性が損なわれません。ただ、ブラインドタイピングは出来ればしたいものです。現時点では、医師にとって、タイピング能は必要です。患者さんの顔をみながら打つわけです。なぜなら、発疹症などでは、私は、頭位が保定されないと、観察がうまく出来ないし、第一患者さん側は、気が散ります。
○ハードとレイアウト
多分、素早い、スクリーンと1m離れた患者さんの顔との切替えは、モニターが面画あかるければ明るい程、残像を残し、患者さんの顔が黒ずんで見える原因になるでしょう。かといって、キーボードと顔の位置が90度のまま、と言うのでは、曲芸的で、やはり対面性が保たれないと思います。こういう意味でも、壁側のモニタ画面と90度の位置に患者の顔があることは大変問題です。このパソコンは中にMac miniが入っているのですが、モニタは、ノートパソコン用の14インチ液晶を箱に貼りつけてみました。バックライトは薄い白地のプラスチック板だけですので、かなり照度が落ちます。それが却って、液晶に不思議な透明感と軟らかさを与えて、目が疲れません。これは思わぬ結果でした。ハード的に一番大切だと思われたのは、マウスでした。Macのシングルボタンマウスは、必然的にクリック回数が増えるので、OsXをお使いの方は、2ボタン+スクロールマウスをお薦めします。いくつかを試してみて、一番手に馴染むものにしないと後で後悔します。
また昨今、無線機器が流行中で、無線LANやBluetoothなど様々なものがありますし、いろいろ試しました、どうでしょう。やはりsecurityの面に問題がでますし、 図のような問題もでます。それに電波が様々な干渉を起こしても、人間の五感で察知が難しく、あまり使わないにこしたことはないと思われます。
これは蛇足ですが、私室は2階にあり、暇な時は、上がってコンピュータの前にいます。患者さんがくると、今は Skypeで呼んでもらっています。無線を使わずしかもタダ!非常に便利です。また、当院は、バリアフリーを徹底しているので、患者さんに聞かせられない連絡は、iChatや timbuktuを利用しています。
なお今回の開発には、主にNetBSDを使用しています。いわゆるunixというと、非常にマニアックな感じ時があるようですが、当院では、WebServer,LanServerはFreebsd( デーモン君)を使っています。 unixでも完成度はたかく、有名なFedoraや debianなどのLinuxとそれほど完成度は遜色がありません。OsXもこの流れです。お叱りをうけるでしょうが、私は、教科書やマニュアルを読むのが苦手なので、説明がやたら多いWindowsより、installから始まって、より感覚的で、詳しいお仲間から情報も得安く、むしろ簡単な気がします。それ以上に、コストが安く、安心です。コンピュータの世界にかぎって言えば、ただより安いものはありません。クロスプラットフォームやマルチプラットフォームに注意してプログラムを作れば、OS限定もありません。主な問題としては、プリンタ設定が若干不安定なぐらいです。
○ブラウザに入力する-あれこれ
さて、カルテに戻りますと、各項目は不完全で、とりあえず、「言葉の羅列程度」にします。最初は試みという事で、そうなったのですが、使い込む打ちに、これを次の編集画面で、「て、に、を、は」を加えて完成させる方が、ちょうど手書きでメモに空欄を作り、埋めるような、自由度が出ることに気がつきました。タイプそのものは、患者と話している時のブラインドタイプでも、会話が途切れてからの目視タイプでも良いと思います。むしろ会話中にタイプすると、お母さんがそれに会わせて、会話速度を調節し、変なしゃべり方になります。会話は、スムーズで、それぞれの思考速度も含めてペースがありますから、それを阻害すると、特にand や orで連なる単語、例えば、熱と咳と鼻と、、のような、表現が非常に阻害され、言いたかった事を忘れるようです。だから、とりあえず、お母さんの喋るスピードで、適当に単語だけを選択し、それが終わったら、画面をクリックして, 編集画面に進み、ここで初めて直すようにしました。 図(Karte1.cgi)
この画面で、上側が、最初の画面をクリックして、表示される文ですが、これでは、文章になりませんので、加筆、ドラッグ、ペーストなどで、成型します。それが、図の下側の窓の文章です。あまり知りませんが、出来合いのモノでは、このあたりが全て最初の画面で行われるため、非常に繁雑で、クリック回数が多く、そちらに精力を取られそうですが、これは本来の医師の問診ー>診察の流れとかけ離れたものです。手書きのカルテに優るものはありませんが、出来るだけその感覚に近づけたいと思いました。そのためには、タイプする部分を増やした方がむしろ良いと思いました。これらを考え併せて、結局一番苦心したのは、一画面の大きさ、フォントの大きさと形、画面の明るさ、クリックやドラッグとタイプの割合、クリックが大いと画面が制限される、さらに、クリックばかりが多いと、意識が集中して、患者さんの話を十分聞けないし、医師にとっても第2指のクリックは腱鞘炎のもとです。それと、腹部所見はやはり、お絵書きツールなどの方が便利ですが、私自身大学で解剖はラテン語でしたので、日本語に置き換えるのが大変ですし、最近はカルテの閲覧がありますから、日本語述語で記述出来ることは必要かもしれません。日常で使っていて、一番言葉に置き換え難いのは、腹部所見の表現と皮膚発疹の表現です。これは、現時点では、しばしば、ボールペンで、絵を書き加える必要があります。
さらに、診療自体に係わる重要なことは、クリック選択やプルダウンによる選択は、自分の意図する内容と相似していても同じではないことです。タイプを入れることで、初めて患者さんの意図を自分なりに解釈できるようになると思います。これが実は、大変重要な要素のひとつだと開発しながら思いました。校正画面を2枚もいれたのはこのためで、しようと思えば校正画面だけで、ワープロ打ちが出来ます。例をあげれば、小児科にとって、発症において、熱発が先か、咳嗽や鼻汁が先かは大変重要なので、このあたりの時間と症状の発現は、やはりタイプしかないと思います。
ブラウザ(Firefox,Safari,IExplorerなど)を使う意味がここでもクローズアップされます。例えば、電子カルテの内容を整理したいとき、あるいは兄弟が同時に受診して、同時にカルテを作りたいときなどブラウザの新タブ作成や、 新ウインドウ作成機能は大変約にたちます。画面は、学会用ですので、表示されませんが、通常業務で使っているものは使い込まれていますので、ブラウザの補完機能でタイプするテキストウインドウにそれまで使用された語句の一覧がでますから、それをtabキーか矢印キーで選択するだけで医学用語などが一発で挿入できることがあり、これが実際時間の節約になって、大変便利です。
次にいきます。以上で、カルテ打ち込みが完成したので、 プリント、保存画面にうつります。ここまでの問題点として、液晶画面は14インチだとブラウザウインドウを3つ広げると手狭だということが解りました。出来たら19インチあればよいと思いますが、それだと、机に埋め込むには大きすぎるかもしれません。蛇足ですが、この図の例にある「マイコ風?」の意味ですが、喘息用気管支炎で熱発がある場合、当地では市中肺炎としてマイコプラズマが蔓延しているのですが、それに言及しておくメモでして、'?'は、この場合「再診を促した」の意味です。ちなみに「!!は必ず再診」の意味に使用します。ついでに、"x?(ペケクエスチョン)"とすれば「おやあ、お母さん疑いもつ」の意味です。