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ウイルスと言うストレッサ−と免疫反応(B型肝炎の理解を通じて)
私が、主に心因と上気道炎症の関係について小児科学会地方会で度々発表してきた理由は、カゼウイルスは、その特異的毒性によってではなく、生体に自律神経症状を主とするストレス反応を起こすのが病態だと思ったからである。自律神経の中枢・視床-視床下部-脳下垂体-海馬回路(thalamus-hypothalamus-hypophysis-hippocampus circuit)は、外界からの刺激をそのメモリ−を使って自動制御しているところである。さらに海馬は、ものの本によれば夜間おもにREM睡眠の時期に記憶を修復改新(up-date)していることが推測されるそうだ。リアルタイムで生体恒常系のsettingの変更を行なっている可能性があるわけだ。それらの制御の結果は、上には新皮質へ神経伝達されるし、下は神経内分泌系、網内系(dendrite cells)を通じても伝達されるのだ。この刺激伝達系、いいかえるとストレス反応のメイン回路に対して、免疫系は、網内系と呼ばれるマクロファ−ジ(macrophage、以下M細胞)敵軍情報キャッチ軍系と、ステロイド分泌系つまり、体力バックアップ軍系への制御を行なっている事実がある。例として私の好きな インターロイキン(主にここではpIL-1.jpg"target=_blank> IL-1と IL-2.jpgの2つの情報ホルモンを考えてみる。
IL-1は多くの細胞から作られるが、主に末梢血中の マクロファージ軍団と、皮膚角化細胞防衛軍が知られる。作られたIL-1は、主に感染防御に働く制御因子の働きを担い、広範な伝達標的細胞をもっている。我らが免疫軍系に対しては、免疫調節性サイトカインと呼ばれて、主にB細胞軍団の活性化をおこなう。感染ストレス時は、アラキドン酸(AA)カスケイドを介して視床下部を刺激し、体温調節(発熱と冷却)や活動性調節(催眠やだるさ)を促す。AAカスケイド自体は、血流中を巡回警護している骨髄系細胞軍団が血管を出て目標体細胞に取り込まれ易くする反応を起こす。これは、I型アレルギ−反応なわけで、当然自律神経症状が発現することになる。さらに、視床-視床下部からの神経分泌系とフォ−メ−ションを形成、CRF--ACTH--ACH-IL-1 という、ステロイドホルモンとのフィ−ドバック制御回路を形成し、ステロイド調節を行なう。こうしてステロイドホルモン軍系が、炎症により弱められた細胞を賦活(修復のためのタンパク合成、エネルギ−供給のための糖新生)するのを支援するだけではなく、肝網内系を刺激し、オプソニン(CRP)産生能力を高めたり、血中遊離Feを低下させる。これらは、炎症というストレスに対し、取りあえず局所適応(local adaptation)、つまり急性炎症反応と呼ばれるストレス反応を強めたり、過度にならないよう調節を行なうと考えれるのである。 これらの生体防御活動のうち、主に活躍する免疫軍系の働きをB型肝炎ウイルス(以下HBV)と言う敵軍つまりストレッサ−が、それも、慢性的ストレス(活動型慢性肝炎= CPH)を加えた状態における免疫活動即ちストレス反応様式をモデル化してみる。反応様式は ストレス克服的行動様式(西本)である。尚、使用した図はその大部分を文献1,3,7より転描させていただいたので、ここで感謝を表します。
1.B細胞軍団の戦術= 体液性免疫
Hepatitis B Virus(以下HBV)は、直径42nmの球形粒子でcore とsurfaceの2重構造をしている。core 内の慢性活動性肝炎では、抗体(以下abで表す)と言う名のB細胞軍の主要武器は、HBcab,HBeabとHbsabである。対する抗原(以下agで表す)と言う名の肝炎軍団の武器としては主にHBsagである。肝炎軍が攻勢の時は、HBsagとHBeagが陽性である。従って、感染性もHBsag陽性の時示され、加えて、HBcabが高い時とHBeabが低い時は、それ以外の時と比べ感染パワ−が高くなる。
免疫軍については、HBsabが中和抗体なので、形成が逆転してくるとこれが増えてくる。従って中和抗体で中和するように闘いを持っていくことが免疫軍団の使命である。HB表面抗原への抗体(HBsab)に因る中和戦術(前のIL-1などの図参照)が完ぺきなときは再感染は防御できるのである。繰り返しになるが、HBsabがない時は、核(core)関連の抗体(HBcab,HBeab)が出来ていても感染防御は困難である。
一般的に抗体の産生については、図2,3のようである。主な回路は図2bの右半分に示した。抗体産生は脾で開始され、のちには他のリンパ組織でもおこる。メインは,先のILの図のように、HBagが抗原因呈示細胞(APC先のマクロファージがその一つ)により成熟B細胞に直接呈示され、その結果、特異的な形質細胞plasma cellが増殖して抗体を多量に生産することによるものである。抗原特異的MHC拘束性Th細胞による成熟B細胞の増殖、分化はサブル−トである。蛇足だが、抗原の増減に合わせての抗体産生の調節は、ちょうど抗原特異的MHC拘束性Th細胞がB成熟細胞に抗原を呈示すると同じ方法で、抗idiotypeMHC拘束性Th細胞が行なっている。