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風の概念とその治療。
『中医臨床【特集】百病の長「風」とその治療 P18〜』より
◆風とは
中医理論のなかで最も基本となる概念である。風は自然現象であり、六気の1つである。六気とは即ち『風・寒・暑・湿・燥・火』の六種の正常な自然界の気候を指す。
風はそれぞれに発生するが主に春に発生する。春というのはすべてのものが再生し、生まれ育まれる。風は疏(通)・散という性質があり、人体のなかでは肝気がこれに相応する。
肝は疏泄をつかさどり、風の流動・温和という性質に順応していきいきとした盛んな生気の象徴であるため、春は風の肝気に通ずる。
(疏泄とは;肝の生理機能のひとつ。自律神経の働きに似ている。精神機能や臓腑の活動をのびやかに円滑に保ち、新陳代謝と同様な意味がある。)
◆風邪とは
『風邪』とは六淫(『風・寒・暑・湿・燥・火』の六気が正常を失った状態)の1つであり、内風・外風に分けられる。外は気分・内は血分(ちわけ)をわずらわせる。
【内風】陰陽の失調・臓腑の異常・気化の異常・気機の逆乱・痰濁や瘀血の凝結・化熱(けねつ)・化火(かか)などにより起こる。
【外風】常に『寒・熱・暑・湿・燥邪』とともに疾患を招く。
《内風について》
内風とは病機と病証を合わせた概念。
内風には2つあり、
・体内の臓腑・陰陽・気血の失調であり、陽気亢逆の病理状態、その病理状態がまねいた病症のことをいう。
・病証の名称。外感以外の原因で発生した中風のことをさす。
1)内風の病機とは陽気の異常である
『素問』陰陽応象大論には「身体の陽気は、天地の疾風に相当する」と記されている。この一節は、後世の内風に対する認識の重要な根拠となり、この一節にもとづき『張氏医通』では「風の証は体内から発生する」と指摘している。また葉桂も『臨証指南医案』中風で「内風とは、身体の陽気の変動である」と指摘し「陽が内風と化す」ことや、その原因が肝であること、さらに「肝は風木の臓である。精血を消耗したことにより水が木を養えなくなり、肝の滋栄が少なくなり肝陽が亢進し内風が起こる(すなわち「肝陽化風」)」という病機理論を強調している。
2)内風の治則
内風の発病は、臓腑の損傷・陰陽の失調が元となる。陰陽の失調は陽亢陰虚が多くみられ、肝との関係がとても深い。
動風の原因は、陽気亢盛となり内風が過度に動いた・陽気が虚して筋が温煦(おんく)されなくなり陽虚生風となった・筋脈失養・陰血が虚して潤いが無くなった・陰が陽を制御できなくなり風と化したなどである。
内風は虚・実に分けられる。
「実」に属するもの → 陽盛・火旺・熱極・痰火・痰熱
「虚」に属するもの → 陰虚・血虚・気虚・陽虚・臓腑の虚損
3)内風証治療の治療例
<実証>
◯痰気化風
中風・眩暈・癇証・身体の震えなどにみられる。眩暈・ひきつけ・震え・意識を失って倒れるなどの症状があらわれ、舌質暗淡・脈沈滑などを伴う。
処方法 → 滌痰湯を煎じ、その薬液で蘇合香丸を服用する。
◯痰熱(痰火)生風
中風・眩暈・癇証などにみられ、眩暈・ひきつけ・人事不省・舌質紅・脈滑数などの症状を伴う。
処方法 → 中風は羚羊角湯を煎じ、その薬液で安宮牛黄丸を服用する。癇証は定癇丸加減を用いる。
<虚証>
◯脾虚肝旺
小児の慢驚風によくみられる。精神的な疲労・肢体や筋脈のひきつけなどの症状があらわれ、舌質淡・舌苔薄白・脈細弦を伴う。「柳選四家医案」評選静香楼医案では「四肢は脾胃の気を受けるため、脾胃が虚衰し受ける気がなくなると、(四肢に)震えがあらわれる。土(脾)が虚すと木(肝)は必ず揺れる」とある。
→四君子湯に天麻・蟬退・鈎藤・当帰・石斛・散棗仁などを加える。
《外風について》
外風の意味は3つある、
・外来の風すなわち風邪
・外風によって起こる病証
・外邪が人体に侵入したことで発生した中風 → またの名を「外中風」ともいう
外風はどこにでも到達することが出来、外風に犯されると気血が損傷し、経脈がスムーズに流れなくなり「痺証(ひしょう)・中風・眩暈・頭痛」などの病証をまねく。