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psyc08-01603161558/1.統合失調症 ......

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○統合失調 S16,S17,S21,S27,S28,S31,S37,S81,S91

問題提起:まず病名。統合失調症。精神分裂病に代えて用いられているこの病名は、あたかも‘統合が失調する’という心的メカニズムを表しているように響きますが、たんに「分裂」という用語を嫌ってほぼ同じ意味を表す「統合失調」という用語に置き換えたにすぎない。また、他の内科的疾患の症状のような、症状の羅列。「DSMは何ゆえに確とした症状用語(術語)を用いずに日常語で済ましてしまうのか」。それは、症状の羅列であって、いままで使用されてきた専門性の高い記述をとらない。例えば、奇異な妄想とはなんだろうと、具体性にかけるのみならず、これらには表出がまったく評価されていないし、(表出;下記)病態の本質、つまり、他者からの批判によっても訂正されないという訂正不能性が欠けて、現実におこりえない妄想が自ら湧いてくる(自生)のか、考えざるを得なくなって妄想にはまりこむ(強迫)のか、そこには、理解不能な、常識から了解不能性のみが取り沙汰されて、誤診などの危険性がある。また、統合失調の本質は、「。。させられる」であり、自己は、体験に対してはまったく被動的立場に置かれている。強迫的思考も自生的である、という本態を忘れると、神経症の強迫(何々をせずにはいられない)と誤診をする。
表出とは。
「どうしてまず最初にその人間の印象ー眼光や挙動、その時発信している空気を感じようとはしてくれないのか」というような、表出への配慮がないので、「DSM診断では診断名を確定するには症状数がある一定数以上なければならない」ということになり、単なる症状の通常の表現の羅列が一定数集まれば、分類されてしまう。例として、1:妄想、2:幻覚、3:まとまりの無い発語、4:支離滅裂や緊張病性の行動、5:感情の平板化、意欲欠如の2つ以上でひとつが1,2,3のうちどれか、という診断基準では、たとえば、3+5を単に症状として、選択可能のDSMでは、病気が蒸しされているので、慢性期の知情意減弱状態が病期(統合失調の後期である感情鈍磨、偽痴呆状態)に無関係に診断できることになる。中安のいうように、「記述式に比べると選択式の解答というのは自分が持っている知識がいい加減であっても正解を得ることが出来る」ので、「3択や5択の解答の方が記述式より解答が容易であるように、解答が得られやすいことが、かえって誤診を招き、例えば、統合失調で思考の弛緩、感情鈍磨、意欲減退期に入ってしまってから誤診に気づいてもその人の快復は手遅れになる。」というのは、正しい。さらに、もともと、とくに初期には、統合失調か、他の状態か判別がつかないのが普通で、半年以上診断がつかないこともままあるが、見落が、「情意減弱状態に至るという手ひどいしっぺ返しをくらう」とある。もともと、「DSMが研究用対象選択基準であって、臨床診断基準ではないこと」もその要因であると中安は言う。しかも研究からのフィードバックががDSM-IV以降は示されて、いささかなりとも成因論に触れられるべきと言う。その通りだと思われる。取り返しのつかない誤診をまねく危険性をこのDSMがもたらす可能性をフロイトなどのフランクフルト学派や、DSMの発起特の精神分析的な手法などに疎い、若い臨床家は忘れるべきではない。


文献: 中安信夫:反面教師としてのDSM-精神科臨床診断の方法をめぐって-,初版,星和書店,東京,2015,p37,p41,p49,p59,p61,p67,p79,p177,p205,207,209